片頭痛
片頭痛とは
片頭痛は、頭の片側あるいは両側で、脈打つような激しい痛みが繰り返し起こる頭痛です。しばしば、吐き気や嘔吐、光や音に過敏になるといった症状を伴います。

片頭痛の原因
片頭痛は、脳内の血管が拡張することで起こると考えられていますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。神経系の異常や遺伝的な要因が関わっていると考えられています。
片頭痛を悪化させたり、引き起こしたりする要因として、以下のようなものが挙げられます。
| ストレス | ストレスを感じている時よりも、解放された後に起こりやすい傾向があります。 |
| 環境因子 | 天候や気圧の変化、強い光、騒音なども影響を与えることがあります。 |
| 不規則な生活 | 睡眠不足や過剰な睡眠、食事の欠落などが誘因となることがあります。 |
| 食事 | 空腹時や、チョコレート、チーズ、ナッツ類などの特定の食品が引き金になることがあります。 |
| 女性ホルモン | 女性の場合、月経周期に伴って片頭痛が起こりやすくなることがあります。 |
片頭痛の治療法
急性期治療
片頭痛の痛みが起きた際の対処法として、痛み止めを常備している方も多いかもしれません。このように、発作時の痛みを抑える治療を「急性期治療」と呼びます。
片頭痛の急性期治療には、一般的に鎮痛薬、トリプタン製剤、制吐薬が用いられ、頭痛の程度によって使い分けられます。軽い~中程度の痛みには、鎮痛薬または鎮痛薬と制吐薬の併用が選択されます。
予防治療
片頭痛の「予防治療」は、頭痛の発作が起こる回数を減らすための治療法です。発作の頻度、症状の程度、持続時間を軽減したり、急性期治療薬の効果を高めたりすることで、日常生活への支障を減らし、生活の質を向上させることを目的としています。
片頭痛の予防注射製剤「抗CGRP抗体薬」
片頭痛を起こすタンパク質「CGRP」について
片頭痛の詳しい原因はまだ完全には分かっていませんが、近年の研究でその発症の仕組みがかなり明らかになってきています。特に有力なのが、「三叉神経血管説」と呼ばれるものです。これは、三叉神経から脳の表面に向かって放出される特定のタンパク質が関与しているという考え方です。
このタンパク質はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin Gene-Related Peptide)、通称CGRPと呼ばれています。何らかの刺激によって三叉神経から脳の表面にある硬膜へCGRPが放出されると、それを受け取った硬膜が炎症を起こします。この炎症が、脳に痛みや吐き気、眠気などを引き起こすと説明されています。
実際に、片頭痛が起きていない時にCGRPを注射で投与したところ、片頭痛が誘発されたという実験結果があり、この説の再現性が示されています。
抗CGRP抗体薬
セロトニンは、意欲に関わるドパミンや、体を活動的にするノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きを調整しています。片頭痛は、このセロトニンが減少することで三叉神経が刺激され、血管拡張作用を持つCGRPというタンパク質が放出され、脳の硬膜で炎症が起こることで発症すると考えられています。
このメカニズムを利用して開発されたのが、抗CGRP抗体薬です。この薬を皮下注射することでCGRPの放出を抑制し、片頭痛の発症頻度を大幅に減らす効果が認められ、2021年より健康保険が適用されています。当院でもこの治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
片頭痛チェックシート
頭痛ダイアリー
片頭痛の主な原因となるストレスは、生活環境、睡眠不足、精神的な負担、ホルモンバランスの乱れなど多岐にわたります。ご自身のストレス要因を把握し、少しでも軽減していくことが大切です。そのために有効なのが「頭痛ダイアリー」です。頭痛の発生日時、前日の食事や睡眠、月経との関連などを記録することで、誘因となりうる要素を見つけ、可能な範囲で避けるようにします。
HIT-6
HIT-6(頭痛インパクトテスト)は、頭痛が日常生活にどれくらい影響を与えているかを把握するためのアンケートです。頭痛の重症度を評価したり、治療の効果を確認したりする際に活用されます。
- 痛み
- 社会的機能
- 役割機能
- 活力/労力
- 認知機能
- 精神的苦痛
これらの質問には、頭痛がある場合とない場合の両方の状況を考慮して回答し、算出されたスコアによって、頭痛が日常生活にどのような影響を与えているかを客観的に評価することができます。
小児頭痛
お子様の頭痛に不安を感じる親御さんは多いでしょう。特に嘔吐を伴ったり、学校に行けないほどの頭痛は心配です。近年、風邪以外の原因による子どもの頭痛が増加傾向にあります。保健室で休む程度の頭痛でも、軽く見過ごされがちです。頭痛外来を受診するお子様の多くは片頭痛や、治療が難しい慢性連日性頭痛(慢性緊張型頭痛または慢性片頭痛)です。お子様の頭痛でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
小児片頭痛
小児の片頭痛は、思春期以降に日常生活に支障をきたすほど重くなることがあります。誘因はストレス、緊張、運動、天候、月経、空腹、食品など様々で、解放時にも起こりやすいのが特徴です。規則正しい生活習慣と誘因回避が重要ですが、慢性化には心身症や自閉スペクトラム症が関連することも。お子様の頭痛には適切な治療が必要です。頭痛専門医への受診をお勧めします。

緊張性頭痛
緊張性頭痛とは

緊張性頭痛は、肩や首のこりが原因で起こる頭痛です。画像検査では異常が見られない、一次性頭痛の一つです。実際には、肩だけでなく首筋のこりも深く関わっています。また、「こり」以外にも様々な要因が考えられています。この緊張性頭痛は、最も一般的な頭痛であり、日本国内では約2000万人もの方が悩んでいると言われています。
緊張性頭痛の原因
身体的ストレス
首や頭まわりの筋肉が慢性的に緊張すると、頭が締め付けられるような不快感が生じます。さらに、首の筋肉が疲れると、頭の重さを強く感じることもあります。
人間の脳は高度に発達しており、頭部は非常に重たい構造です。この重い頭を支えているのが、首の骨(頚椎)と筋肉です。しかし、加齢によって頚椎が変形したり、筋力が低下したりすると、その分を補うために首の筋肉に過剰な負担がかかるようになります。
また、悪い姿勢を続けたり、長時間同じ姿勢で過ごしたりすると、特定の首の筋肉に集中して負担がかかり、疲労が蓄積しやすくなります。
筋肉が疲労の限界を超えると痛みが現れ、やがて首や肩の筋肉が慢性的に凝り固まってしまうのです。
精神的ストレス
精神的なストレスも、緊張性頭痛の重要な原因の一つです。
人がストレスを感じると、自然に交感神経が優位になります。交感神経が活発になると、体を守ろうとする反応として、全身の筋肉が緊張しやすくなります。特に、首周りの筋肉に無意識のうちに力が入り続ける状態が慢性化すると、慢性的な緊張性頭痛を引き起こすことがあります。
緊張性頭痛の治療法
薬による治療法
筋緊張性頭痛には、一般的な鎮痛薬が効果を発揮します。
さらに、安定剤や筋弛緩薬を併用すると、より高い効果が期待できます。
ただし、安定剤や筋弛緩薬には眠気の副作用が現れることがあるため注意が必要です。もし眠気が強く感じる場合は、医師の指示に従いながら、服用時間を夜のみにするなど調整することも検討できます。
生活習慣の見直し
薬は一時的な緩和に過ぎず、根本的な改善には繋がりません。そのため、日頃の生活習慣を改善していくことが大切になってきます。
頭痛の主な原因は肩や首のこり、血行不良です。長時間同じ姿勢を避け、首回りのストレッチで筋肉の緊張をほぐしましょう。背骨全体の正しい姿勢も重要です。朝の頭痛には寝具の見直しを。ストレスも悪化要因となるため、意識して肩の力を抜きましょう。軽い運動も効果的で、特に首を動かすスイミングなどがおすすめです。若年層でも肩こりは起こりうるため、日頃から体を動かし、こりとストレスを解消することが大切です。生活リズムに合わせた適度な運動を取り入れましょう。